トンデモ裁判、沖縄集団自決訴訟大江側の勝訴確定

トンデモ裁判を正しく理解できるのか。


沖縄集団自決訴訟 大江健三郎さん側の勝訴確定 最高裁
2011.4.22 13:01
 太平洋戦争末期の沖縄戦で旧日本軍が「集団自決」を命じたとするノーベル賞作家、大江健三郎さんの「沖縄ノート」などの記述をめぐり、旧日本軍の元戦隊長らが名誉を傷つけられたとして、岩波書店と大江さんに出版差し止めなどを求めた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は元戦隊長らの上告を退ける決定をした。集団自決についての軍の関与を認め、名誉毀損を否定した大江さん側勝訴の1、2審判決が確定した。決定は21日付。

 原告は元座間味島戦隊長で元少佐の梅沢裕さんと、元渡嘉敷島戦隊長の故赤松嘉次元大尉の弟の秀一さん。「沖縄ノート」と、歴史学者の故家永三郎さんの「太平洋戦争」の集団自決に関する記述をめぐり、「誤った記述で非道な人物と認識される」として提訴していた。

 争点は軍や元戦隊長らによる住民への命令の有無だったが、同小法廷は「原告側の上告理由は事実誤認や単なる法令違反の主張。民事訴訟で上告が許される場合に当たらない」として、判断を示さなかった。

 1審大阪地裁は「集団自決に軍が深く関与したのは認められる」と指摘して請求を棄却。2審もこれを支持し、控訴を棄却していた。

 msn産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110422/trl11042213010001-n1.htm

 「集団自決に軍が深く関与したのは認められる」というのは「軍命令があったことを事実と断定」と誤って受け取られかねない非常に曖昧な表現で危うさを感じます。実際、そう誤認したと思われる人がいました。内容を詳しくしっている人はわかるでしょうが、良く知らない一般大衆は誤解する可能性が大であり、プロパガンダ利用される懸念が残ります。

 大阪高等裁判所の判決要旨
「(2)・・・『軍官民共生共死の一体化』の大方針の下で日本軍がこれに深く関わっていることは否定できず、これを総体としての日本軍の強制ないし命令と評価する見解もありうる。しかし、控訴人梅沢及び赤松大尉自身に対してこれを命令したという事実(最も狭い意味での直接的な隊長命令 − 控訴人らの言う『無慈悲隊長直接命令説』に限ればその有無を本件証拠上断定することはできず、本件各記述に真実性の証明があるとはいえない

 総体として軍の関与があるが、直接的な隊長命令の証拠はなく、真実性はない、と言っており、なんとも判りにくい。そして当人が重大な不利益を受けていないと思えるから、名誉毀損にはあたらないし、言論の自由の範囲内、という判決なわけです。裁判の争点は「命令」の有無ですから、命令があったのか、なかったのか、わからないのならわからない、と言えばよいのですが、「関与」という言葉でぼかしました。「関与」というと「自決せよ」も「自決するな」も「傍観」も全部含みます。ようするに裁判所は大江側に配慮して逃げたということでしょう。

 裁判所の言うように『軍官民共生共死の一体化』の大方針だから「関与」が認められるというなら「官」も関与があり、宮平供述を採用すると玉砕命令を座間味村の助役・宮里盛秀が出し、山城教頭(後、沖縄テレビ社長)は島民を殺しまくりました。渡嘉敷では金城重明という牧師が島民を殺しまくりました(裁判で本人が自供。沖縄県史にも手伝った少年の手記あり)。彼らを沖縄ノートばりに「罪の巨塊」「屠殺者」「ペテン」と罵っても名誉毀損に該当しないことになります。殺人事件として立証されていないことをそのような書き方をして良いのか?


 この裁判の異常性はこうした裁判所の「逃げ結論」だけでなく、証拠の採用にもあります。

 原告側の主張のもの
  梅沢供述書・・・到底採用できぬ。
  宮村幸延の詫び状・・・大筋は正しいが採用できぬ。
  照屋昇雄供述・・・信用できぬ。
  宮平秀幸供述・・・明らかに虚言。
  「ある神話の背景」の評価・・・赤松命令説を覆していない。取材対象に偏り。
 
 大江側主張のもの
  「鉄の風防」の評価・・・多少の誤記はあるが、資料価値は否定できぬ。
  「沖縄ノート」の評価・・・戦後民主主義を問い直し、日本人の反省を促す。
  「宮城初枝手記」・・・信頼できる。


 明確に一方的です。専門家の予想では大方、原告有利でしたから、何らかの思惑が動いたのでしょう。「ある神話の背景」などは「軍命令あったと主張する派」からもこの研究を上回るものはない、と言わしめたものです。宮平秀幸供述などは決定打だったのですが、「明らかに虚言」と真っ向から否定しています。ほかは「信用できぬ」「採用できぬ」としていますから、意地になって否定しているように見えます。実は判決後に宮平供述を裏付ける証言がとれていました。最高裁で提出するつもりだったのでしょう。裁判所はこれはマズいと判断して上告を棄却した可能性があります。裁判所がノーベル賞受賞者の大江氏を庇ったことは明らかでしょう。

 だいたい「自決」とういのは自分の意思で命を絶つことです。それを命令だの強制だの言い出すこと自体、戦後のある種のイデオロギー下で無知な作家が最初に捏造した話であることがわかろうものです。



※裁判の判決要旨や証言、事実関係はPHP「沖縄戦『集団自決』の謎と真実」秦邦彦(編)より引用、参考にしました。

添付画像
 渡嘉敷島(PD)

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