愛国少年・愛国少女 〜 沖縄戦

国に命を捧げることは愚かなことか?


 昭和20年(1945年)3月26日より始まった大東亜戦争沖縄地上戦では学徒隊(鉄血勤皇隊ひめゆり隊、白梅隊など)が組織されました。

 沖縄一中・鉄血勤皇隊、武富良浩さん
「被害者意識ばかりを強調するいまどきの沖縄研究者にかかると『軍国主義に毒されていた』の一言で片付けてしまうのですが、少なくとも私たち上級生は『我々にも学校教練で鍛えた戦闘能力がいくらかはあるのだから、敵上陸という事態になれば、学校から言われなくても軍の特攻基地がある与那原(島尻郡大里村)に集結し、迎え撃とう』と申し合わせるほど、国を護る気概に燃えていました」

 こういった話は沖縄だけでなく本土でも全くしませんね。

 永岡隊(郷土兵で組織した特設警備二百二十三中隊)の救護班に入隊した翁長安子さん。
「私も兄たち(長男は陸軍少尉、次男は航空整備兵)に負けぬようお国のために役立ちたい」

 白梅学徒隊 中山(旧姓・津波)きくさん。
「家族に入隊すると言うと『行くな』と引き止められました。那覇市街が全焼した10・10空襲の直後だし、家族としては私を手元から離したくなかったのでしょう。でも、小学校から『お国のために』と教えられてきた愛国少女でしたから、こんなときに私たちが行かなくてどうする、と思っていました」

 ひめゆり学徒隊 上原当美子さん。
「国のために傷ついた人を、国のために看護するのだ」

 今の価値観は「個人主義」「命が大事」が主流で、学徒隊へ向けられる論調は大江健三郎氏の「沖縄ノート」が象徴的でしょう。

沖縄戦にむりやりひきずり出されながら、生き延びることの可能性については客観的にも、主観的にもそれを想像する力をうばわれている者たちとして、酷たらしく死んだ沖縄の娘たち」

 これでは死者の尊厳も何もあったものではありません。沖縄のニライカナイ信仰(祖霊崇拝)からしても非常に侮辱的だと考えるのは私だけでしょうか。

 「個人主義」「命が大事」は沖縄で言えば「命どぅ宝」※1 になりますが、この言葉は「命に勝るほど大切なものはない」ということで、見方を変えると国家への忠誠や郷土愛を下に見るか否定しています。この価値観では大東亜戦争を戦った沖縄県民や素手で米軍に立ち向かった昭和45年(1970年)のコザ騒動は理解できないでしょう。東日本大震災福島第一原発事故で緊急修理要員に志願した人は命をかけて志願しました。決死隊と呼ばれて作業をし、賞賛されています。「命どぅ宝」を至上の価値観とする人たちは賞賛しないのでしょうか。もし志願した人が死亡したら「無理やり引きずり出されながら酷たらしく死んだ」というでしょうか。そんなことはないでしょう。自己の利益を追求する活動よりも、世のため人のために見返りを求めずに奉仕する活動をするときに、人は精神の高揚を感じます。これは人間のもつ種族保存本能からきています。自然なことなのです。種族保存本能が自己保存本能を凌駕した姿が大東亜戦争時の日本国民であり、沖縄戦時の沖縄県民だったのだと思います。

 そもそも現在の価値観だけで過去を見てしまうことも歴史を見る上で正しい見方とは思えません。

 野呂邦暢芥川賞作家)
「一つの時代を後世の価値観で裁くことは、私たちがおちいり易い錯覚である。国家に殉じることが、最高の名誉とされた時代もあったのである。反戦を叫ぶ現代の日本人が、一時代前に戦って死んだ人々よりすぐれていることにはならない」

 我々はダーウィンの進化論をよく教えられてきましたから、現代人は進化し、科学、経済といった点数をつけれるところで優れているからすべて優れていると錯覚しがちであり、伝統的な「徳性」や本能に基づく国家、共同体、家族、個人に対する考え方において優れているとは限らないでしょう。野呂邦暢氏はこうも言っています。

「反省とは戦後、連合国が日本に要求した侵略者として日本を自認することではなくて、戦争のなかにおける自己の客観化である」

 「自己」というのは当時いたその人を指しています。それを客観化するとは大変難しい。あの時代においてのその人の心の葛藤、その人になったつもりで考えるのが良いかもしれません。少なくともGHQが日本を「侵略者」としてレッテルを貼り、プロパガンダと検閲による「軍」と「民」を対立する思考になるよう「洗脳」したことには米国の「意図」があり全く客観性はないでしょう。



※1 「戦世ん済まち 弥勒世もやがて 嘆くなよ臣下、命どぅ宝」 (いくさゆんもしまち、みるくゆんもやがて、なげくなよしんか、ぬちどぅたから)が語源。
明治の「琉球処分」のときに尚泰王首里城を明け渡して東京へいく船に乗ったときに詠んだという説があるが、沖縄芝居の中で作られたセリフらしい。



参考文献
 光人社「沖縄一中 鉄血勤皇隊」田村洋三(著)
 PHP「沖縄戦 集団自決の謎と真実」秦郁彦(編)
 岩波新書沖縄ノート大江健三郎(著)
 まほらまと草紙「まほらまと」南出喜久治(著)
 小学館「沖縄論」小林よしのり(著)

添付画像
 沖縄戦時の住民(PD)

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