再生可能エネルギーは原発に代われるか

原発比率3案って実現できるの?




原発ゼロ「実現可能、むしろ経済にプラス」 枝野経産相

msn産経ニュース 2012.8.7 11:44

 枝野幸男経済産業相は7日の閣議後会見で、2030年時点の総発電量に占める原発比率について、「ゼロにすることは選択肢の中に入っており、当然実現可能だ」と述べた。「段取り、やり方を間違えなければむしろ経済にプラスだ」とも強調した。
続き http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120807/plc12080711450009-n1.htm

 広島の平和記念式典に出席後、戻ってきた野田総理原発ゼロの課題検討を指示(※1)したことを受けての発言だと思われます。こうした動きを見ていると日本の技術は世界でトップレベルだから18年後ならなんとかなるだろう、と思ってしまいます。ですが、太陽光発電を主とする再生可能エネルギーというのはオイルショックからもう約40年も昔から取り組んでいて未だに補助金がなければやっていけない分野なのです。枝野経済産業相「ハードルは高い」とも述べていますが、現実高すぎるのです。

 川崎市にある浮島太陽光発電所、扇島太陽光発電所はメガソーラーと呼ばれ、浮島は年間約740万kWh、扇島は年間約1,370万kWhを発電します(※2)。すごい技術です。こんな技術があるのなら18年後ぐらい簡単簡単と思いがちですが、現在日本の総発電量は年間1100TWh程度で、これまで原発は3割を占めていましたから原発の発電量は330TWhです。330TWhを供給するのに、1,370万kWhの扇島太陽光発電所がいくついるかというと・・・桁合わせが面倒なくらいです。お時間のある方は計算してみてください。T(テラ)にゼロを9個くっつければK(キロ)と桁が合います。

 わかりやすくいうと原発1基分の発電を太陽光で補おうとすればソーラーパネルを山手線内いっぱいに敷き詰める面積が必要になります(※3)。日本にある原発は54基ですから、この54倍必要です。風力発電ではもっと広い面積が必要になります。原発1基に対して直径90mの風車が1840本必要になります(※4)。40年も取り組んできてこの状況ですから18年でどこまでいけるでしょうか。

 そもそも、原発の代わりに再生可能エネルギーを使うということ自体トンチンカンな話です。電力というのは安定したベースになるエネルギーが存在して、需給のバランスを調整するのにいくつかのエネルギーを組み合わせるものなのです。

 東京電力の資料です。(※5)

 下のほうがベース供給力で上はピーク供給力になります。ベース供給力は安定した電力が使われ、その上のピーク供給力は化石燃料の電力で調整するのです。ベース供給力の主力は原発です。太陽光や風力というのは天候に左右され、夜は発電しませんから、ベース供給力の主力におきかえることはできないのです。蓄電すればよいではないかと思う人もいるでしょうが、そのような設備は莫大な投資が必要ですので、現在のところ大規模な設備はありません。作れば電気料金に跳ね返ってきます。

 なんとか原発に代わるものがないかと色々な人が一生懸命考えていますが、なかなか難しいのが現状です。太陽光も天候に左右されない宇宙空間に太陽光発電所を建設する計画があり、JAXA(宇宙開発機構)が研究を勧めており、2030年の商用化を目指していますが、何しろ宇宙空間のプラントです。そのように早く実現できるでしょうか(※6)。核融合の研究も進められています。人工の太陽を作るというものです。しかし、これも実用化には何十年かかると言われています。地球の自転をエネルギーとして利用するという話もあります(※7)。いずれもすばらしい構想なのですが、まだ夢物語という段階なのです。

 原子力エネルギーに代わるベースとなるエネルギーは、実際のところ遠い先の理想です。原発比率目標について「討論型世論調査」という国民の考えを聞く場が設けられましたが、この中に、原発比率を下げるべきだという当初の見解を持っていた東京の男性が「再生エネの普及の難しさがわかった」として原発比率を上位にする意見に変わったというのを新聞で読みました(※8)。至極当然のことです。マスコミが原発に対して騒ぎ立て不安を煽る中、よく冷静に見ておられると思いました。

 このようなことをエリートの政治家や官僚が知らぬはずはないのですが、なぜかそろいもそろって「脱原発」を掲げます。でも誰も実現に向けた具体的プランは提示しません。大雑把に100兆円投資とか、1000万戸にソーラつけるなどといって経済三団体から「非現実的」と、厳しく批判されています(※9)。 実はみんな、わかっているのです。できないってことを。だけどマスコミが「脱原発」だと、やんややんやと騒いだので、政権浮揚や近々総選挙があるのを見越して「脱原発」を掲げているのです。言っておかないと選挙に勝てないと思っているのです。言わば国民はバカだから「騙してやれ」というようなものです。野田総理脱原発の可能性について指示したのも枝野経済産業相脱原発についての言及も「出来ない」けど言っておかなければ支持を得られないから、というものなのです。




※1 読売新聞8月7日朝刊4面「原発ゼロ 課題検討指示」
※2 東京電力 太陽光発電(メガソーラー) http://www.tepco.co.jp/csr/renewable/megasolar/index-j.html
※3 新潮新書「『反原発』の不都合な真実」藤沢数希(著)より
※4 日新報道脱原発のウソと犯罪」中川八洋(著)より
※5 東京電力 電気の使用状況に応じた発電 http://www.tepco.co.jp/solution/power_equipment/index-j.html
※6 WikiPedia「宇宙太陽光発電
   JAXA 宇宙エネルギー利用(太陽光の利用) http://www.ard.jaxa.jp/research/hmission/hmi-ssps.html より
※7 ビジネス社「マインドコントロール2」池田整治(著)より
※8 読売新聞8月6日朝刊「原発比率 世論調査
※9 読売新聞8月9日朝刊9面「原発比率3案『非現実的』」

添付画像
 東京電力広報 写真 | 新エネルギー http://www.tepco.co.jp/tepconews/pressroom/new_energy-j.html

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