浮世絵文化が再び世界を席捲!?日本のアニメ旋風

ジャポニズムは復活した。




 慶応3年(1867年)、パリ万国博覧会で日本は伊万里焼を送りました。伊万里焼保護のためにと、今の新聞紙のように包み紙として使ったのが、当時の広告紙である浮世絵でした。パリっ子は浮世絵を見て衝撃を受けました。その構図はそれまで西洋にないアンシンメトリー(非対称性)であり、色彩、強調の仕方(デフォルメ)、平面性に衝撃をうけたのです。また、そこに描かれている江戸庶民の高い生活水準と自由な生活スタイルにも衝撃を受けました。

 古典派、バルビゾン派印象派の画家は浮世絵を積極的に買い求め、浮世絵の技法を研究し、自分の画風に取り入れました。マネ、モネ、ドガ、ホイッスラー、ゴッホセザンヌルノワールゴーギャン、ベルナール、ロートレッククリムト、シーレは浮世絵の構図、分割、非対称性、色彩調和法、強調性、平面性、装飾性を取り入れたのです。ゴッホらは「印象派」と呼ばれていますが、「ヤパン・インプレッション」であり、本来は「日本主義」「日本版画派」と訳すべきものなのだそうです。

 こうした浮世絵をはじめとする芸術における日本ブームは「ジャポニズム」と呼ばれ江戸日本の開国後、半世紀にわたり世界を席捲しました。やがて世界は日本の美を吸収し、独自の美を創出していきました。日本は欧化が進んで本来の日本の芸術の発展は終わったかに見えました。

 ところが、時を経て日本人の美意識が再び世界の桧舞台で見られるようになります。ファッションの世界では森英恵高田賢三三宅一生が活躍し、いずれも日本のキモノ文化からくるデザインが注目を集めました。
 森英恵は日本の伝統的花鳥風月の模様を全身にちりばめたドレスを発表し、パリの被服界に衝撃を与えました。
 高田、三宅はキモノのゆるやかな柔軟性と直線的裁断による、重ねて着る発想を取り入れました。それまでは身体にフィットしたデザインが主流でしたから、破天荒な発想でした。これは19世紀末のジャポニズムブームでキモノ文化が流行し、西洋女性をコルセットから解放したのに似ています。
 ケンゾーはオートチュクールといった高級服でなく、庶民が気軽に着れるプレタポルテ(既製服)の新興勢力を強め、若いデザイナーを刺激しました。これはジャポニズムの発信が江戸庶民の生活文化であることに通じています。

 日本人はどこか潜在的に伝統的美を意識しており、それが再びネオ・ジャポニズムとして旋風を起こしたのです。では浮世絵はどうなったか?そう、マンガ・アニメとして引き継がれました。浮世絵の線による単純化、平面性、色彩、デフォルメはマンガ・アニメに取り入れられています。
 日本のアニメは世界を席巻しています。「anime」(アニメ)は「日本の商業アニメーション」の意味です。「animation」(アニメーション)とは区別されています。つまり「アニメーション」を輸入し、独自の「アニメ」を作って世界に輸出したということです。

 世界中のコミックショップに並ぶマンガのおよそ9割は日本マンガの翻訳版が占め、フランスでは「ドラゴンボールZ」が最高で67%の視聴率を叩き出しました。日本のポップカルチャーをテーマとした博覧会が世界各地で開催されていることも見逃せません。「ジャパン・エキスポ」は有名でしょう。平成22年(2010年)のジャパン・エキスポは11回目となり18万人の入場者を数えました。
 新浮世絵カルチャーであるマンガ・アニメは人の生き方に影響を与えた例もあります。女子バレーボールでイタリアのエースであったピッチニーニは「アタックNo.1」をみてバレーボールにあこがれ、主人公の鮎原こずえと戦うのが夢だったといいます。「キャプテン翼」の影響でサッカーを始めたというプロのサッカー選手が世界に数多くいます。フランスのジダン、ガッテューゾ、デルピエロトッティザンブロッタ・・・ジラルディーノ「翼の歩んでいた道こそ僕らの夢そのものだったんだ」と語ったことがあります。主人公の大空翼はマンガの中でスペインリーグでFCバルセロナで活躍したことがありますが、ライバルのレアル・マドリードの幹部が「なんで翼をうちに入れなかったんだ」と怒ったエピソードがあります。
 日本のアニメ・マンガは欧州だけでなく、東南アジアでも人気です。タイでは「ドラえもん」が大人気で、日本の外務省が「ドラえもん」をアニメ文化大使に任命し、タイを訪問したことが報じられたのを覚えている人もいるでしょう。

 アニメ・マンガで特筆すべきなのは翻訳された本は横文字にも関わらず、日本式の右開きになっていることです。左開きにすると左右でつながった絵が逆転してしまう不都合があるからです。日本式右開きを西洋人が受け入れたのは驚きです。また、アニメの吹き替えを好まず、字幕を見ながらでも日本人声優の声を聞きたいとか、マンガが翻訳されるまで時間がかかるので、日本語版を読みたいので日本語を勉強するといった現象も起きているといいます。

 残念ながら、日本ではアニメ・マンガは子どもの読むものという意識やオタク文化という見方によってはネガティブに捉えられています。麻生元総理がアニメ美術館の構想を言い出すと、マスコミは「マンガばかり読んでいるから漢字が読めない」と叩いて潰してしまいました。日本文化の発信と多くの国々との交流、経済効果は計り知れないものであるのに、それを潰したマスコミは、歴史に残る文化犯罪をやったといえるでしょう。そして「韓流」「K-POP」に走るのですから、狂気の沙汰です。しかし、まだまだ先はありますから、がっかりすることはありません。われわれ日本人が2600年の連続した歴史に育まれた美意識を持ち続ける限り、日本文化は世界を席捲し続けることでしょう。



参考文献
 ビジネス社「マインドコントロール2」池田整治(著)
 文藝春秋「美のジャポニズム三井秀樹(著)
 PHP新書「日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか」竹田恒泰(著)

添付画像
 ウィキペたん Auth:Kasuga (CC)

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