大杉事件は甘粕大尉の犯行か

大杉栄殺しの真相は?


 大正12年(1923年)9月1日、関東大震災が発生し、その後の9月16日、無政府主義者大杉栄、妻・伊藤野枝(内縁)、甥の橘宗一が麹町憲兵分隊長の甘粕正彦大尉らに殺害されるという事件が起こりました。大杉事件あるいは甘粕事件と呼ばるもので、犯行は甘粕大尉個人の考えによるものとされ、本人もそう主張し、10年の実刑判決となりました。

 ところが、麻布三連隊の犯行であると証言する人もおり、甘粕大尉と共犯とされた森慶次郎憲兵曹長憲兵大佐の斉藤美夫が刑務所に面会に来たとき「大杉を殺したのは麻生三連隊だ」と訴えていたことを証言しています。作家の池田藤四郎は「大杉は麻布三連隊の営庭で射殺されたのだ。私の甥の中尉が目撃している」と証言しています。日本新聞の記者、大石基隆は畑俊六(元帥)から大杉栄ら三人を殺したのは麻布三連隊だが、当時三連隊には秩父宮がおられたので、宮の名に傷の付くことを恐れ、憲兵隊がこの事件をかぶることになったのだ」と聞いたといいます。

 麻布三連隊犯行説は少し無理があり、大杉栄は麹町分隊で多くの者に目撃されています。そこから大杉らを麻布につれていき、射殺して、死体を再び麹町分隊まで行って古井戸に投げ込むというのはなかなか考えにくい話です。また、甘粕大尉らの裁判の共犯とされた森曹長や2人の上等兵の証言は食い違いが多少見られるものの、あそこまで作り話をして口裏合せを事前に行うのも考えにくい。しかし、麹町分隊で3人の人間が殺害されたのに、誰一人として物音ひとつ聞いていないし、死体を運ぶところを見た者もいないというのも不思議な話です。

 甘粕大尉は出獄後、フランスへ渡り、一旦帰国し、その後満州へ渡っています。多くの人は甘粕を殺人鬼として嫌悪し、警戒しましたが、彼と身近に接して親しくつきあった多くの人たちは「甘粕は真犯人ではない」という印象を抱くようになったといいます。満州にいた岸信介、古海忠之、武藤富男といった高級官僚たちも当初は嫌悪していましたが、次第に甘粕の魅力に引きつけられ、裁判官出身で法律の専門家である武藤富男は、わざわざ東京にまで足を運んで、裁判記録、資料を丹念に調べ上げ、「甘粕は真犯人ではない」と確信するに至ったといいます。

 甘粕大尉は大杉栄殺害の真犯人ではないのか?

 ユダヤ研究の最先端機関であった「国際政経学会」の監事だった渡部悌治氏は甘粕大尉から聞いたとし、著書の中で次のように書いています。
「甘粕の言うところによれば、大杉は後藤新平(大杉事件当時は内務大臣)の内意を受けて、ヨッフェ(ソ連外交官)来朝に使いし、それが成功したので、いよいよ名声を博するようになった。甘粕がその大杉を抹殺しなければならなくなった理由は、大杉がユダヤ財閥と深い関係を持っていたからであり、その殺害は、ユダヤと大杉の関係を絶つためであったという。警視庁は、親英米派である重臣どもの息がかかっていて実行できないから、憲兵隊でこれを始末するしかなかったというのであった」

「甘粕のこの説明のなかで、特に興味を覚えたのは、彼がはっきりユダヤを口にしたことである。そのユダヤの陰謀が日本を禍いしていたこと、さらにはユダヤの陰謀に大杉が関与していたことを甘粕が知っていたということである」

 震災当時はロシアで革命がおこって間もない頃であり、上海経由で無政府主義者社会主義者朝鮮人らのテロリストが日本に侵入し、しょっちゅう事件があった頃です。この裏にはユダヤ財閥があり、無政府主義者の大杉が関与していたというのです。憲兵隊がその事実を掴んでいたとして不思議はありません。やはり甘粕大尉の犯行か?指令を出したのは陸軍筋か?少し見えてきた気がします。



参考文献
 ちくま文庫「甘粕大尉」角田房子(著)
 PHP「板垣征四郎石原莞爾」福井雄三(著)
 成甲書房「ユダヤは日本に何をしたか」渡部悌治(著)

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添付画像
 甘粕正彦 大正12年9月(PD)

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