軍と国民の対立構造を作ったGHQ

反軍思想はGHQが仕組んでいた。


 私は子供のころ、太平洋戦争は軍部が天皇と国民をずっとだましていて戦争を続けたため、国土が焦土化し、その後、アメリカがやってきて真実を明らかにして、自由を与えてくれたと教わりました。昭和40年代、50年代の話なんですが、これってGHQの日本人洗脳プログラムの継続だったんですね。

 戦後間もない昭和20年12月8日より新聞上に「太平洋戦争史」が連載されました。それまで日本では「大東亜戦争」と呼んでいたのですが、名称変更されたのです。同時にラジオ番組で「真相はかうだ」という「太平洋戦争史」を劇化したものが放送されました。これは後に「真相箱」という視聴者に質問の機会を与える番組になりました。

 軍が国民を騙したことにする格好の材料は大本営発表でしょう。「真相箱」より珊瑚海海戦の部分が以下になります。

「珊瑚海海戦は日本が敗れた最初の大きな戦いでありますが、これに関する大本営発表は日本の損害の真相を伝えておらず、5月8日の発表は次のようなものでした。
『帝国海軍部隊は、5月7日、米戦艦カリフォルニア型一隻を轟沈、英甲級巡洋艦キャンベラ型一隻を大破し、英戦艦ウォースパイト型一隻に大損害を与え、更に、本8日ヨ−クタウン型の米空母一隻を轟沈し、目下なお攻撃続行中なり。』
 続いて5月9日の大本営発表は、
『珊瑚海方面に於いて攻撃続行中の帝国海軍部隊は、更に巡洋艦一隻、(艦型不詳)に対し雷撃機の体当たりを持ってこれに大損害を与え、又駆逐艦一隻を撃沈せり。一方7日以来彼我上空において敵機89機を撃墜せり。この間我方小型航空母艦一隻沈没、飛行機31機帰還せず』
 とありました。
 珊瑚海海戦に関するこの日本大本営発表は、その後続け様に発表された虚偽の報告、誇大な捏造発表の先頭を切るもので、国民は、これにより戦争経過の真相を知ることを阻まれたのであります」。

 そもそも珊瑚海海戦は戦術的には日本の勝利であり、負けたとは言えないのですが、敵空母一撃沈、駆逐艦一他一撃沈、空母一中破が本来の戦果ですから、確かに水増しした戦果になっています。

 このころの戦争はすでに「戦争の帰趨はもはや前線の軍隊によってではなく、銃後の士気によって決定される」(ドイツ ルーデンドルフ将軍)に表されるようにこうした発表はどこの国もずいぶん注意を払っていたのです。それに戦果は報告が重複しやすく過大になりがちなものです。また自軍の損害を正直に発表すると敵に正確な戦果を教えることになるので、過少に発表するのが普通です。真珠湾攻撃でもアメリカ側は当初、三隻の戦艦が沈んだことは発表していましたが、それ以外は機密として伏せられていました。
 日本では戦時中は戦争の状況は大本営発表しか報道は許されず、検閲を行っていました。じゃあ自由の国というアメリカはどうかというと、大統領令8985号が発令され、同じように検閲を行っていたのです。違反した場合、日本の法は最高刑が懲役1年なのに対し、米国は禁固10年ですからはるかに厳しい。

 GHQは「真相箱」のようなプロパガンダに加え東京裁判などを行って国民が軍を憎むエネルギーを発生させようとしたのです。それによってアメリカを憎むというエネルギーを削ぐわけです。さらにGHQは「太平洋戦争史」を学校教育で使わせることにして、昭和21年4月9日に文部省より「新学期授業実施に関する件」が発表されます。

「尚、連合国総司令部提供に係る『太平洋戦史』は高山書院に於いて近く発行、日本出版配給統制株式会社を通じて供給せらるる予定に付各学校は夫々を購入の上国史等授業停止中の教材として適宜利用せらるべきものとす」

 私が受けてきた教育はこの延長上にあったわけです。



参考文献
 文春文庫「閉された言論空間」江藤淳(著)
 小学館文庫「真相箱の呪縛を解く」櫻井よし子(著)
 徳間書店「GHQ焚書図書開封西尾幹二(著)
参考サイト
 WikiPedia「珊瑚海海戦」

添付画像
 日本軍の攻撃を受け炎上するアメリカ海軍空母レキシントン 珊瑚海海戦(PD)

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