日本軍側の暗号解読


 大東亜戦争で日本軍の暗号は完全に解読されていた、それを日本軍は気づかなかった、という話を聞いたことがあるでしょう。ちょっとおかしいことに気づきます。日本軍は米軍の暗号解読しなかったの?こういう観点は抜けてますね。なにやら戦後のGHQなどによる「白人には勝てない」意識を植え込むための偏向歴史刷り込みの匂いがします。

 ビルマ航空戦の兵士の記録を見ていると昭和18年(1943年)ぐらいからは英暗号解読が進み、英軍の暗号から英空軍の部隊の名前と隊長の名前がだんだんわかってきています。チンタゴン基地の中隊長ダッケンフィールド大尉が勇敢で日本兵の間にも知られており、日本兵パイロットは「今日はダッケン氏、出てくるかな」などと思っていたようです。

 米暗号の解読はなかなか進まなかったようで昭和18年になって数学者をの協力を仰いでいます。それまでは軍の機密事項なので民間人を入れるのはタブーだったんですね。東大数学科の名誉教授・高木貞治という世界的権威の数学者で、高木教授は天才学者らメンバーを集めて暗号解読に取り組んでいます。昭和19年には米軍の暗号を解き始めていたのです。
 ところが残念なことに、アメリカ本土からサイパン経由で特殊な目的で何かが日本に向かっていることまで読んでいたのにその頃には米軍の飛行機を迎撃する戦闘機がありませんでした。陸軍の暗号少佐の釜賀一夫さんは戦後、「あと二年早く昭和16年から数学者を使い始めていたらあんなに簡単には負けなかった」と悔しがっていたといいます。

 実は山本五十六連合艦隊司令長官がブーゲンビルで戦死したのも日本軍の暗号が読まれていたからで、これに気づいたので民間の数学者を入れる決断になったのでした。海軍も陸軍も暗号が読まれていることを知っていたようです。どうも事なかれ主義で口をつぐんだか、情報に対する重要性の認識不足で黙っていたかが事実のようです。

 現在、数学の世界では整数論代数幾何というのがあり、この分野で日本は世界のトップレベルだといいます。そしてこれは暗号に使う数学なのだそうです。世界各国は同盟国といえど潜在的には敵であり、裏では諜報合戦をやっているのですが、今の日本はトップレベルの数学力を国家のために使うことなく、「友愛」などと言ってのんびり構えてしまっています。



参考文献
 「栄光 加藤隼戦闘隊」安田義人著
 「歴史通」WiLL2010.1月『国家の”風格”は情報にあり』藤原正彦

添付画像
 米軍暗号機M209(PD)


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