戦場の情景


 西尾幹二著の「GHQ焚書図書開封」の中で芥川賞作家の火野葦平さんの著が紹介されており、いままで知らなかった戦場の情景を知ることができました。戦後語られている戦場というものは恐ろしいところで、悲惨極まりない、といったところだけ焦点が行きがちで、人間の心に触れたものは少ない。西尾幹二氏は「GHQ焚書図書開封3」の中でそういった人間の心にも焦点を当てています。大阪毎日の記者・松村益二という人の「一等兵戦死」(昭和13年10月)という記録、随筆を紹介しています。松村益二氏は応召で戦地に行っています。

上海戦のときの模様です。


 伏せては走った。
 弾は低くて、ブツブツブツと目の前の棉畑(わたばたけ)の土に落ちた。みんなの呼吸の音がはげしい。
 棉畑のうねの間に伏せて
曹長殿、服が汚れるのが惜しいですね」
 とお母さん子(これはひ弱そうな兵士のあだ名)が言った。
「案外、度胸がすわっているね。中村」
 横島曹長が苦笑した。
「しかし、命のほうが大切だよ。中村、そら走れ!」
 みんな無事だった。
 お母さん子は、顔を泥だらけにして、はげしい呼吸をしていた。滑稽な顔だった。
「おや、あれは・・・」
 お母さん子の指したところに、新しい墓標があった。こんもんりと土が盛られて、水筒が供えられていた。
「戦友の墓だね」
 横島曹長が答えた。
「花が供えてありませんね。仏様は花がないと淋しいのに」
 民家の天井を見ると、玉ねぎがたくさんぶら下がっていた。お母さん子は黙ってその一つを取ると、へっぴり腰で墓の方へ歩いていった。ピュピュンと弾丸が来ると伏せた。横島曹長は黙ってみていた。
「戦友、花がないと淋しいだろうね。玉ねぎだけど、ほらこんなに青い芽が出ている。がまんしてくれる。これはお線香の代わりだよ」
 彼は玉ねぎを供えて合掌し、煙草をすいつけて盛り土の前においた。

 私が受けてきた教育は戦争は悲惨、残酷。日本軍は悪いことをした。こればっかりです。軍隊では「家族の写真も見れなかった」と教える先生もいました。だから、こういった文章を読むと「ほう」と思います。人間の心がちゃんと描かれています。心があって当たり前なんですけどね。



参考文献
 「GHQ焚書図書開封3」西尾幹二

添付画像
 「丹陽へ入場する片桐部隊」(昭和12年12月3日)(支那人が操船している)〜 日新報道「南京の真相」より

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