祈る君主

 天皇陛下のお仕事に皇室祭祀というのがあります。早い話「祈り」です。大祭、小祭、旬祭とあります。大祭は天皇陛下自らが祭典を行う祭祀です。これだけでも元始祭(1月3日)、先帝祭(1月7日)、春季皇霊祭(春分の日)、神武天皇祭(4月3日)、秋季皇霊祭(秋分の日)、神嘗祭(にいなめさい)(11月23日)とあり、先帝以前三代の式年祭というのがあります。小祭も多くあり、数えるのが大変なのでやめておきますが、30前後ぐらいでしょう。一年中お祭りといってもよいと思います。お祭りと言っても庶民のみこしを担いで酒を飲むようなものではなく、非常に神聖なもので冷暖房設備の無い宮中で何十分も平伏しなければならないものもあります。天皇陛下のメインの仕事は「祈り」であり、天皇陛下は国民の安寧、五穀豊穣を祈り続ける祭司王だったのです。私は以前は天皇陛下というのは憲法に定められた国事行為とTVや新聞で報道されるようなことを普段行われていると思っていましたが大間違いでした。
 神嘗祭は古代から行われてきた祭祀で、戦国時代以来中断していましたが、江戸時代に復興し、18世紀末の光格天皇が本格的に復興させています。天皇陛下は神話の時代より民の安寧のために祈ってこられたのです。これは西洋の王などとは全く異質なもので、西洋の王様は権力を持って民衆などとは対立構造があったので、民衆の反乱のために途絶えたりしていますが、日本の天皇は民衆のために祈る祭祀王であり、2600年続いてきたのはこれが理由でしょう。

 昭和天皇は最期の病床に伏したとき、お見舞いに上がった宮内庁長官にこう言われたそうです。
「雨が続いているが稲の方はどうか?」






万葉集より(言霊信仰による祈りの歌)
 大和には 群山あれど とりよろふ
 天の香具山 登り立ち 国見をすれば
 国原は 煙立つ立つ
 海原は 鴎立つ立つ
 うまし国そ あきづ島 大和の国は 



参考文献
 「日本人としてこれだけは知っておきたいこと」中西輝政
 「天皇論」小林よしのり


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