鎮魂祭と新嘗祭

日本人の食文化の原点。


 11月22日は鎮魂祭、23日は新嘗祭(にいなめさい)が宮中で行われます。(勤労感謝の日というのはGHQ占領政策によるもの)

 鎮魂祭は初代神武天皇の御時に物部氏の祖、宇摩志麻治命(うましまじのみこと)が十種(とくさ)の神宝を以って、天皇の鎮魂をしたのが始まりです。これには陛下のお出ましはありません。この日は掌典職(しょうてんしょく 宮中祭祀を担当する部門)によって綾綺殿(りょうきでん)に祭場を設けられ、玉体の守護神である神々をお迎えして掌典長以下が祭儀を奉仕し、神饌(しんせん お供えもののこと)を供えます。そして鎮魂の儀式が行われます。これは陛下のご霊力を鎮め、さらに奮い立たせ、翌日の新嘗祭に備えるためのものです。

 新嘗祭は神嘉殿の神座に天照大神の御霊をお招きして、米、粟をはじめとする穀物の今年の出来を奉告、感謝し、また新穀で作ったご飯やお酒を陛下がご自身で天照大神にお供えになり、ご自身でもお召し上がりになります。神がお召し上がったとみなされるお供え物を人が頂くことにより、その神霊を人の体内に取り入れることができるという考えによるものです。

 神嘉殿の儀式は「夕の儀」(午後6時)と「暁の儀」(午後11時)と同じことが二回繰り返されます。すべてが終了するのが24日の1時をすぎます。天皇陛下は堅い板の上に座布団も敷かずに2時間も正座しなければなりません。ですから陛下は新嘗祭が近づくとテレビを見ながら正座の練習をして臨まれているといいます。侍従も同じように正座しなければならず、昭和天皇の侍従であった入江相政は、これがイヤでしょうがなかったそうです。この人は大祭、小祭ともに皇族の代理を廃止したり、小祭の侍従の代拝を取りやめるなど、乱暴なことをやっており、こういう人が侍従をやっていたとは信じられません。

 この新嘗祭御告文では今年一年の穀物の奉謝と国家、国民の幸福をお告げになって祈られます。


 新嘗の祭始まりぬ神嘉殿ひちりきの音静かに流れる。

 今上天皇の皇太子時代の御歌です。”ひちりき”というのは神楽などで使う管楽器、笛みたいなもので、天皇陛下がお出ましになると神楽歌がはじまります。そのときの様子を詠まれたものです。


 歌う声静まりて聞こゆこの時に告文読ますおほどかなる御声

 神楽歌の歌が静まるころに天皇陛下御告文を奉じるご様子を詠われています。皇太子殿下は祭祀のときは神嘉殿隔殿にいらっしゃいます。御殿には天皇陛下とお供えを手伝う巫女二人しか入れません。ですので、音や声にによってご様子を察して詠まれているのです。

 私たちが毎日食べている食事は神話の時代に神の命と引き換えにもたらされ、天照大神が民に授けたものです。だから天皇陛下新嘗祭天照大神をお招きし、ひとつひとつの食をご報告し、奉謝し、国民の安寧を祈られるのです。日本人の食に対する感謝の原点が新嘗祭にあります。



参考文献
 「宮中祭祀」中澤伸弘著
 「天皇論」小林よしのり
 「歴史人」2010.12『天皇の祭祀の世界』所功監修
参考サイト
 WikiPedia「鎮魂祭」

添付画像
 千葉県の香取神宮新嘗祭・悠久の舞 Auther:katorisi

 伊勢神宮では外宮と内宮において大御饌(おおみけ:神が召し上がる食事)が奉(たてまつ)られる。そして宮中で新嘗祭が行われるのに際して、天皇陛下が神宮へ勅旨を御差遣(ごさけん)され、外宮では午前7時に奉幣の儀が行われる。内宮でも同じように午前11時に大御饌の儀、そして午後2時に奉幣の儀が斎行される。



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