曖昧さに対して突っ込みを入れた梅田氏

プロが素人に対しての不可解なツッコミ。


 梅田正巳著「近代日本の戦争」では田母神論文の「日本は相手国の了承を得ないで一方的に軍を進めたことはない、というのは本当か」(P25)を取り上げて、それを検証する試みを行っています。
 
田母神論文より



ア メ リ カ 合 衆 国 軍 隊 は 日 米 安 全 保 障条約により日本国内に駐留している。これをアメリカによる日本侵略とは言わない。二国間で合意された条約に基づいているからである。我が国は戦前中国大陸や朝鮮半島を侵略したと言われるが、実は日本軍のこれらの国に対する駐留も条約に基づいたものであることは意外に知られていない。日本は19世紀の後半以降、朝鮮半島や中国大陸に軍を進めることになるが相手国の了承を得ないで一方的に軍を進めたことはない。現在の中国政府から「日本の侵略」を執拗に追求されるが、我が国は日清戦争日露戦争などによって国際法上合法的に中国大陸に権益を得て、これを守るために条約等に基づいて軍を配置したのである。これに対し、圧力をかけて条約を無理矢理締結させたのだから条約そのものが無効だという人もいるが、昔も今も多少の圧力を伴わない条約など存在したことがない。

 ここでポイントになるのは「相手国の了承を得ないで(得て)」「国際法上合法的/条約等に基づいて」という部分と対象となる事象は何か?ということだと思います。田母神論文は曖昧です。
 
 >日本は19世紀の後半以降、朝鮮半島や中国大陸に軍を進めることになるが相手国の了承を得ないで一方的に軍を進めたことはない。
 
 これだけを読むと全軍事行動が対象になります。
 
 >現在の中国政府から「日本の侵略」を執拗に追求されるが、我が国は日清戦争日露戦争などによって国際法上合法的に中国大陸に権益を得て、これを守るために条約等に基づいて軍を配置したのである。
 
 これだと満州事変や支那事変のことを言っているように解釈できます。
 
 対象となる事象が曖昧で、かつ「相手国の了承を得ないで(得て)」「国際法上合法的/条約等に基づいて」がどれにかかっているいのかも曖昧です。
 
 私は田母神氏の著書は2冊読みました。そのひとつの「自らの身は顧みず」にこの田母神論文と同じ論旨の記載があります。



 日中戦争侵略戦争だったという人の誤解の一つに、「理由はともあれ日本軍が大陸や半島で行動していたではないか」という意見がある。首相をやったような高位の政治家や経済界の人にもそう言って中国や韓国への謝罪外交を正当化する人を見かける。
 確かに日中戦争の始まるきっかけとなった盧溝橋事件のときに日本軍は北京にいたし、満州国には関東軍がいた。(中略)
 日本は19世紀後半以降に朝鮮半島や中国大陸に軍を進めていたが、相手国の了承を得ないで一方的に軍を配置したことは一度もないのである。
 日本は日清戦争日露戦争などによって合法的に権益を得てこれを守るために条約等に基づいて軍を配置したのである。

 どうやら田母神氏は支那が「日本が侵略した」と主張する盧溝橋事件、支那事変において日本軍が駐留していたことについて「相手国の了承を得ないで」「国際法上合法的/条約等に基づいて」を主軸において、軍の駐留について述べているようです。これを梅田正巳氏は明治維新から大東亜戦争までの期間の駐留問わず軍事行為すべてとして解釈し、前提において論述したということです。これでは梅田正巳氏の田母神批判は的外れになってしまいます。田母神氏は歴史についてはプロではなく素人です。梅田氏は素人にツッコミを入れて一人で踊ってしまったようです。

添付画像
 盧溝橋

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