マッカーサーを激怒させた男

 ニューズウィーク東京支局長で英国人のコンプトン・パケナム記者は米軍占領時代に日本を取材し、昭和天皇の信頼が厚かった松平康昌や鳩山一郎吉田茂、樺山愛輔、白洲次郎、野村吉三郎らと交流がありました。この人の肉筆の日記が発見され、ジャーナリストの青木冨貴子さんが新潮45の8月号よりパケナムの日記をもとに戦後の日米秘史を連載しています。

 パケナムは公職追放された元駐米大使の野村吉三郎に会いにいき、銀行口座も凍結され、収入もなく、病身の妻の薬すら手に入れることができないのを目にし、野村に缶詰やタバコを差し入れするようになります。そして早速「占領は失敗の連続」とニューヨーク本社へ打電。

「産業界、金融界、商業界のリーダー25,000から30,000人が職を奪われることになった。・・・要するに日本の経済構造全体を支えている人々が仕事から締め出されようとしている」

 そしてこの追放抗争については占領軍将校のなかにも困惑する勢力があり、実態調査のためにワシントンから日本に調査団を送るべき、と主張しました。

「自分の指揮下にある民生局の行動がどのようなイデオロギー的意味をもっているのかについて、果たしてマッカーサーは気づいているのだろうか」

 パケナムの上司ハリー・カーンも来日し、取材してまわり、「日本で起きている驚くべき危機的状況をはじめて包括的にリポートする」と発表します。

「真に抜本的な対策がとられないかぎり、・・・アメリカの世界再建と共産主義封じ込め政策の一環として日本を『極東の工場』にする機会は消えうせるだろう」
公職追放があれほど大規模に行われたのは、ひとつには民生局のホイットニーの性格ではないか」
「民生局内でもホイットニーは人気のある人物とはいえない。日本人は”キツネが憑いているのではないか”とさえ言っているいるのだ」

 マッカーサーは激怒し、パケナムを「ファシスト」、カーンを「反動」とののしり、パケナムの記者証再発行を拒否するという異例な事態にまで発展しました。
 パケナムが主張している内容の詳細は、記事ではわかりませんが、おそらくGHQ内のピンカーズ(赤いやつ)のことを指しており、彼らのマルクス主義の虚偽意識から来る行動を非難しているのだと思います。マッカーサーも既に気づいていたのでしょうが、ホイットニーなど片腕とも言える人です。こうあからさまに指摘されたので激怒したのでしょう。ホイットニーはマルクス主義の虚偽意識を条文化した日本国憲法を押し付けた張本人でしたね。



参考文献
 新潮45・8「昭和天皇に密かに通じ、マッカーサーを激怒させた男」青木冨貴子
 「続・日本人が知ってはならない歴史」若狭和朋著

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