皇室の存在意義
上智大学名誉教授の渡部昇一氏は戦後10年目の昭和30年(1955年)ドイツへ留学し、ある家庭へ招待されたときのこと、「日本にはたしか、”テンノー”という元首がいたはずだが、敗戦後はどうなったのですか?」と訊かれました。そして「今でも天皇は戦前と変わらずに在位していますよ」と答えたところ、ドイツ人は非常に驚いたといいます。欧州では革命や戦争で敗北した元首や帝室が以前と変わらず存在しているということは信じられないことだからです。
渡部氏はイギリスやアメリカでも日本の皇室は神話の時代から2600年以上も連綿と続いているという話をすると彼らは一様に関心すると述べています。
世界には日本を含めて28の君主国があります。人口100万以下の君主国は9。100万から1千万以下は11。人口5千万以上の君主国というと日本、イギリス、タイのわずか3カ国となります。人口からすると日本は世界最大の君主国となります。歴史を見てもデンマークの王室が女系を含めて10世紀頃まで行き着くことができます、イギリスのウィンザー家18世紀以来で、さかのぼれば11世紀半ばのノルマン朝。タイのチャクリ朝は18世紀後半からの血筋です。日本は2600年の歴史があり、大和朝廷を考えても3世紀半ば以来となります。
外国人の皇室の観察をあげてみます。
大正から昭和初期にかけての駐日フランス大使 ポール・クローデル
「日本の天皇は魂のように現存する。彼は常にそこに居るものであり、いつでも居続けるものである。・・・個々の行動を天皇に帰するのは不都合であるし、不敬でもあろう。彼は介入しない。民の問題に労働者のように口をさしはさみしない。だが、彼がそこに居なければ、物事はそれまでのように立ちゆかなくなるであろうこと、たちまち物ごとが頓挫し、逸脱してしまうであろうことは知られる通りである」
歴史学者 ベン・アミー・シロニー
「歴史が始まって以来、日本の統一された社会、国家を象徴するものといえば天皇制であった。日本の歴代の天皇は政治手腕に欠け、経済、軍事面で非力であったにもかかわらず、他のどんな大勢力も立ち向かうことのできない、ある種の強力な権力を行使していた。他の国々とは違い、歴代天皇が日本の歴史に直接の影響を与えたことはほとんどなかったが、天皇だけが有する威力が日本人を統一させ、日本国にその正統性を与えたのであった。天皇こそが、日本の不動の核なのである」
なかなか的を射ていると思います。もし、皇統が断絶したら、ポール・グローデルの言葉を借りると「たちまち物ごとが頓挫し、逸脱してしまう」となり国が混乱することになります。ベン・アミー・シロニーの言葉からでもなんらかの大権力、たとえば独裁的な勢力が出現させる可能性もあるし、日本がバラバラになり不安定になる危険がでてきます。もし、女系天皇になったとしてもそれは「断絶」を意味しますから同じことでしょう。
こうして見ると皇位継承の問題は、日本という国の権威や日本そのものの存亡に関わような大きな問題といえます。日本人が皇室に対して無知ではいけませんし、反皇室的なメディアは日本を混乱に陥れようとする意図があることを見抜かねばならないでしょう。
参考文献
「渡部昇一の昭和史(続)」渡部昇一著
オークラ出版「世界に愛された日本」『世界に冠たる日本の皇室』高森明勅
世界最強の天皇陛下
http://http://www.youtube.com/watch?v=grusT6J7bXc
http://www.youtube.com/watch?v=grusT6J7bXc